恋愛ウォッチャーが現場で見てきた恋愛模様から、『うまくいく恋』を分析するブログ

これまでに5,000組以上のマッチングをしてきた経験を持つ恋愛ウォッチャーのあんりさ。 幾多の男女の出会いを間近で見てきた筆者が、イマドキ男女の生態の違いや恋愛事情をお届け。

可愛いわけじゃない。スタイルも普通。自分よりパッとしない女が、自分よりもモテる理由は、男を『芸術鑑賞モード』にするのに長けているから!?

特段に容姿が整っているわけではない。

(むしろ中の下の部類に入るだろう。)

 

スタイルも良いわけではないし、頭も良いかというとそうでもない。

 

そういう女が、なぜか男にモテているのを見たことはないだろうか。

 

そして、そういう女はどういうわけか独特の色気を放っていて、

男たちはそれに引き寄せられていくのだ。

 

彼女たちは、どのようなテクニックを使って男を魅了しているのだろうか。

 

その謎を解くヒントが、鹿島茂の「悪女入門 ファム・ファタル恋愛論

(2003年、講談社現代新書)にあった。

 

少し長いが、引用したい。

 

「まことに不思議なことですが、私たちの眼というのは、

あるしゅんいかんに、面前にある「現実」を見ているはずなのに、

実際には、それを超えた彼方にある「非現実な何か」を見てしまう

ことがあります。

 

その摩訶不思議な現象の最たるものは、絵画、とりわけ芸術絵画と

呼ばれるものを見るときの私たちの心のモードです。

 

現実の絵画は、物質的にはいくつかの絵具の堆積にすぎません。

目を近づけてみれば、そのことは明らかです。

 

ところが、一定の鑑賞距離からそれを眺めると、その絵具の堆積が、

この世のどんな美女よりも彼岸的な美女に見えることがあります。

 

このとき、私たちは、絵具の堆積という現実類似物(アナロゴン)

を介して、非現実を見てしまっています。

 

サルトルが『想像力の問題』で指摘したように、この瞬間、

 

私たちの心は、想像力を最大限に働かせる

 

「芸術鑑賞モード」に入っているのです。」

 

 

 

そして、鹿島は、大した特徴もないのに男を惹きつけてやまない女は、

男を「芸術鑑賞モード」に誘うのが得意だと指摘する。

 

彼女たちは、現実の自分の姿を介して、男たちに、非現実な美女を見させる

術を心得ているというのだ。

 

 

鹿島の研究するファム・ファタルの中には「男を虜にするために

芸術鑑賞モードに導くのが上手な女」というのが存在する。

 

では、この女たちがどのようなテクニックを使っているのかを具体的に

見ていく前に、「ファム・ファタル」とは何かを確認しておきたい。

 

 

ファム・ファタル

宿命の女。妖しい魅力で男を虜にし、時に破滅させる魔性の女。

19世紀末~20世紀初頭の西欧文学。美術にしばしば登場する。

ナナやサロメが典型。(広辞苑

 

 

とりあえず、男を虜にする妖しい魅力を持つ女ということはイメージできるが、

なんとなくフワフワしている。

 

フランスの広辞苑的な辞書「ラスール大辞典」を直接引き、鹿島ができる限り

直訳に近い形で訳したのが以下である。

 

「恋心を感じた男を破滅させるために、運命が送り届けてきたかのような

魅力を持つ女」

 

つまり、出会うことが運命付けられていると同時に、男にとって「破滅を招く」

ような魅力を持つ女、というわけだ。

 

鹿島は言う。

 

「破滅することがわかっていながら、いや、へたをすれば命さえ危ないと

承知していてもなお、男が故意にのめりこんでいかざるをえないような、

そんな魔性の魅力を持った女のことを、ファムファタルというわけです。」



ファム・ファタルにもいろんなタイプがあるが、男を「芸術鑑賞モード」

に入れ込むのも、彼女らが持つ魅力の一つといえよう。

 

 

では、フランス文学の中でのファム・ファタルは、どのように男を

「芸術鑑賞モード」に誘い入れたのか。

 

その題材として、鹿島は「スワンの恋」(プルースト)という物語を挙げている。

 

 

物語のあらすじはこうだ。

 

 フランスの高級サロンで人気を博す、芸術や音楽に関して絶対的な鑑識眼

持つ青年「スワン」は、ある日高級娼婦のオデットを紹介される。

 

 細身の美人オデットはスワンに対して積極的だったが、スワンは

「まったくタイプではない(むしろ気に入らないとさえいう)」と冷たく

あしらう。

 

 ところが、何度もオデットと接しているうちにスワンはオデットに

ハマっていき、遂には結婚してしまう。

 

 

では、スワンにとってはまったくタイプではなかったオデットは、

どのようにしてスワンの心を手に入れたのか。

 

これにはいくつかのステップがあるのだが、まずは自分を魅力的な女に

見せるための「芸術鑑賞モード」を発動させたことが大きい。

 

 

著書「悪女入門」の中で、オデットが男を「芸術鑑賞モード」に

誘い込めたのは、3つのポイントがある、と鹿島は指摘する。

 

 

オデットのテクニックを、なるべく現代に置き換えて紹介していきたい

と思うが、このテクニックは一朝一夕で身につくようなものではない。

 

 

  1. 小道具を使う

相手の男がどんなきっかけで「芸術鑑賞モード」に入りやすいかを見抜き、

それを誘発するような小道具を使う。

 

オデットは自分の家にスワンを誘い、度々誘惑する。

彼女の家は、日本絹や扇子、菊、屏風などをあしらったオリエンタルな

部屋だった。(当時パリではジャポニスムが流行っていた)

 

その、エキゾチックでオリエンタルな彼女の雰囲気を象徴するために、

オデットは小道具としてキクやカトレアなどの花を使う。

(これについては後述)

 

 

「オリエンタルな雰囲気のオデット」のオリエンタルさを印象付けさせる

ためにその種類の小物と一緒に自分を演出する。

 

そして、そう言った小道具と自分の体を結びつけることで男に自分を

記憶させる。

 

エキゾチックな部屋の中にある(当時は高価だった)日本絹のクッションを、

造作なく、小さく笑いながらスワンに宛てがう。

 

そうすることで、スワンに

アヴァンギャルドでいながら洗練された趣味の持ち主」というイメージを

持たせることができた。

鑑識眼に優れたスワンにとって、そういう趣味の持ち主は魅力的だ)

 

このように、小道具を使ってそのイメージを自分の中に見せることによって、

相手の男が持っている「非現実の美女」を自分を通して見せることができる。

 

これは、言うなればキャラ設定である。

 

相手が求めるキャラクターを見抜き、そのキャラクターをイメージさせる

振る舞いや見た目を演出することで、

相手の男に「求めているキャラクター」を自分の中に見せることができる。

 

それを効果的に行うために、小道具を使う、ということだ。

 

オデットのように考えると大仰なことをしなければいけないと思うかも

しれないが、何のことはない。

 

例えば、女に「柔らかい癒し系」を求める男の場合は、着ている服や持ち物に、

「柔らかさ」「癒し」を想起させるものを持てば良い。

 

それは、手触りが良かったり、淡い色の服を着る、というのもそうだし、

バッグにもふもふしたファーをあしらい、男に触らせるというのもありだ。

 

(男に触らせる行為は、それなりの度胸と経験がないと難しいので、

手触りが良さそう、触ったイメージを想起できるようなものを

身につけるのが良い。)

 

 

  1. 感覚に訴える

次に、オデットはスワンの感覚、殊に味覚に訴えかけた。

 

オデットはスワンに紅茶をご馳走するのだが、「ただの美味しい紅茶」

として出すのではなく、

 

「スワンが飲むための美味しい紅茶」という演出をすることで、彼の中で

その紅茶を特権化させた。

 

鹿島も著書の中で「恋愛というのは、モノそのものよりもモノに込められた

関係から生まれるものだ」と言っているように、

 

オデットは紅茶を「スワンの紅茶」として意味づけることで、恋心を

芽生えさせることに成功した。

 

 

オデットは味覚をして感覚に訴えたが、現代に置き換えるとどうだろうか。

 

例えば、二人でどこかに出かけたりした時に、良い匂いのものや美味しいもの

と出会ったりする。

 

そういった、五感を刺激するようなものに出会った時に、相手の存在と

結びつけるのだ。

 

例えば、良い香りのものに出会ったら、「この香りは『私の中で』〇〇さんの

イメージだ」とか、そういう形で感覚と相手を結びつけ、そのモノを特権化

するのだ。

 

  1. 自分のイメージをある特殊なモノと結びつける

3つ目のポイントは、アピールしてきた自分のイメージを、ある特殊なモノと

結びつけることだ。

 

オデットは、「カトレア」を性的なメタファーとして使うことで、

「もともとはタイプではないオデットの肉体」をカムフラージュすることに

成功する。

 

 

ランの仲間であるカトレアは、その姿形がエロい。男性器にも、女性器にも

見えるようなエロティックな形をしている。

 

オデットはこのカトレアを介在することで、スワンに自分の肉体にエロティック

さを見出させる。

(この後二人はセックスをするが、オデットとスワンはセックスすることを

「カトレアする」と言い合っていた。)

 

このように、オデットは現実のオデットの体をアナロゴンとして、

スワンに「芸術作品」を見させているのだ。

 

 

自分のメタファーにどのようなイメージを持たせるのかによって、

何をどのように使うかは変わってくるが、

性的なイメージをメタファにしたいのであれば、(そういったイメージを

植え付けさせた上で)例えばルージュやグロスなどを男の前で敢えて塗る、

というようなあざとい演出も有効だ。



経てして、オデットはスワンが求める女のイメージを具現化することで、

スワンの心を手に入れることに成功した。

 

時代は違えど、このテクニックを応用すれば、現代にも十分に通用するものだ。

(そして、現にうまく使っている女たちも実在する)

 

余談だが、スワンは、この物語の最後にこう呟く。

 

「まったく俺ときては、大切な人生の無駄にしちまった、死のうとさえ思い、

あんな女を相手に一番大きな恋愛をしてしまった。

俺の気に入らない女、俺の趣味でない女だというのに!」

 

 

男は、タイプではない女と結婚することもあるのだ。

 

ファム・ファタルは男を惑わせ、判断を狂わせることもできてしまうのだ。

 

 

興味がある人は、原作を読んでみると面白いだろう。

 

 

 

 

◆One-Timeデート◆

 

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次回は8月25日@横浜


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