「恋人を欲しいと思わない」若者が増えている日本。そこから見えてくる、意外な社会的背景①
先日の記事でも紹介をしているが、恋人を欲しいと思う若者が減っている。
オーネットの新成人意識調査では、1991年では約9割のフリーの若者が、
いま恋人が欲しいとしているのに対して、2018年の新成人は76.5%と、
4人に1人のフリーな新成人が今恋人を欲しいと思わないと回答している。
恋人をいらないとする理由についてはいくつかの説がある。
①自分自身のアイデンティティを確立させるために、精神エネルギーを他に
使いたくないから
(詳しくは恋愛エネルギー理論を参照)
②幼い頃の経験から、人を頼ったり愛する・愛されることへの欲求が少ないから
③幼い頃の経験から、人から拒否されて傷つくことを極度に恐れているから
④異性の前だと萎縮してしまうから(ラブ・シャイネスという)
⑤自己充足個人主義(依存し合う関係を嫌い、可能な限り自給自足に努める
態度を示す人)だから
などとあるが、この説をそのまま見ても「恋愛をしない若者が増えた」
理由を見つけることはできない。
しかし、若者が恋人を欲しいと思わなくなる大きな理由として、若者が恋愛に
対して否定的なイメージを持っていることは、昨今の意識調査でも指摘
されている。
2009年に山岡拓が出した「欲しがらない若者たち」(日経新聞出版社)
の中では、「現在の20代後半の独身者は、30-44歳の既婚者が20代独身
だったときと比べて、恋愛によって「楽しい・幸福感が得られる」という
肯定的なイメージを持てておらず、一方で「お金がかかる」「面倒・煩わしい」
「自分の楽しみの時間が減る」というような否定的なイメージは、
20代後半の独身者の方が強く持っているという。
これらの理由を、昨今の社会の変化に触れながら見ていきたい。
その理由として考えられるのは、以下の4つである。
①「恋愛における男女不平等」への困惑を引き起こす、男女平等社会の弊害
②超高度情報化社会が引き起こす、恋愛の「既視感」
③バーチャルと現実の埋められない溝による「圏外感」
④リスク回避を第一とする、若者の「まじめ化」
それぞれかなりボリュームのある項になるため、今回は前半と後半に分けて
紹介をしていきたいと思う。
①「男女平等」という社会の中で育った若者たちの、
「恋愛における男女不平等」感への困惑
現代の男子青年は、男女平等という価値観のなかで育ってきた。
そのため、男ばかりが頑張って女を口説くということが理解できないという。
事実、これまで出会ってきた20代半ば~30代前半ぐらいの男たちには、
「最近は男が全ておごるのをいやがる女もいる」とか
「(合コンなどで)全部男のおごりはいやだから、
女にも1000円払ってもらう」などと言う者もいる。
(が、残念ながら「1000円だけ払う」というのは奢りはもちろんのこと、
3000円払うよりも評判が悪かったりする。)
インフィニティの社長である牛久保恵も、「恋愛しない若者たち」
(2015年、ディスカヴァー・トゥウェンティワン)野中で、
男女平等社会の中の男女不平等恋愛という矛盾が、若者、
特に男に憤りを生じさせ、恋愛しようという意欲を低下させているのでは
ないかと指摘している。
「恋愛心理学特論」の著者、高坂康雅も「男女平等という価値観をもつ
現代の男子青年は、男性が女性に積極的にアプローチをして、
告白し、恋愛関係に至るという男性主導の関係構築に抵抗があり、
そこまで男性ががんばらなければ恋人ができないならば、恋人は欲しい
とは思わないようになる」と述べている。
②超高度情報化社会が引き起こす、恋愛の「既視感」と「圏外感」
結婚の過程として恋愛を位置づけさせてきた日本は、恋愛に高い価値を
置いている社会である。それは、青少年が接する漫画やアニメ、映画、
ドラマ、歌などのメディアにおいても見ることができる。恋愛が主要な
テーマとなっているからだ。
このような環境の中、日本の若者は幼い頃から様々な恋愛を見聞きしてきた。
また、スマートフォンやSNSの普及により、身近な友人や芸能人の恋愛まで、
多様な恋愛のあり方に接する機会を得ている。
これらを通じて、現代の青年の一部は、過剰なまでに恋愛に対する情報に
接してきた。
そうすると何がおこるか。
実際に自分では体験していない恋愛をあたかも経験したかのような
「恋愛既視感」が芽生える。
高坂は、マーケティングアナリストである原田曜平の、メディアが若者に
与える影響を以下のように紹介している。
「若者がマスコミやインターネット、口コミなどから過剰ともいえる情報を
受け取ることにより、経験したことがないのにどこかで経験したことがあるか
のように錯覚してしまう既視感を感じており、既視感によって、若者は
新しいことをしようとする意欲や動機が低下し、行動範囲がせまくなっている。」
恋愛にも同じようなことが起きると考えられると言えよう。
後半の二つは、次回で詳しく紹介したい。
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